質問のかたちと言葉の遊び。。。

・けっこう昔からある質問のかたちで、
 「あなたにとって(  )とは何ですか?」
 というのがあります。
 おそろしく乱暴な訊き方です。
 たぶん、1960年代の終りごろに、
 「先鋭的なテレビマン」が考えた形式だと思います。
 わざと、答えにくい質問で殴りつけておいて、
 その反応を確かめるという意図なのかもしれません。
 
 この形式は、そのまま学生なんかにも流行して、
 「おまえにとっての(  )って、何なんだよ?」
 などと、詰問するように言い合って、
 あれこれやりあっている場面も、よくありました。

 この質問、訊く側は、なんにもしなくていいんです。
 答える側が、すべての責任を持っている。
 そして答えは、ある意味、まったく自由で、
 どんな答えでも答える者の「個性」というわけです。
 例えばね、「あなたにとって(仕事)とは何ですか?」
 なんて訊かれたら、「りんご」と答えてもいい。
 ただ、「りんご」で済ましちゃくれないんだなぁ。
 「それは何故ですか?」と追試みたいな質問がくるから。
 「生かしてくれる栄養であり、たのしみな甘味です」
 とかね、謎かけみたいなことでも答えなきゃならない。
 
 「ことばの遊び」だったんだと、いまさら思います。
 そして、「ことばの遊び」にしては、
 もったいぶっていますよねぇ。
 ぼくは「ことばの遊び」は大好きですが、
 「遊び」は「遊び」だという遠慮がなきゃだめです。
 矢沢永吉の『成りあがり』という本の副題は、
 企画段階から決まっていて「HOW TO BE BIG.」でした。
 たしかに矢沢永吉は、ビッグと言われるようになり、
 若者番組で、「ビッグのあと、どうなりたいですか?」
 と質問をされていました。
 永ちゃん、ここで、こう答えていましたっけ。
 「それは、ことばの遊びでしょう。
  ことばの遊びとして答えるならば
  ‥‥グレイトってことになるんじゃないですか」
ほぼ日刊イトイ新聞/2012年07月25日/今日のダーリンより)